はじめに
アメリカで旅行中や生活している際、水道水の味に違和感を感じたことはありませんか? 世界的に見ても水道水の品質が高いとされる日本と比較して、アメリカの水道水はなぜ美味しくないと感じられることがあるのでしょうか? さらに、アメリカ国内でも州や地域によって、水道水の味が大きく異なることがあります。私自身ボストンに住んでおり、日本に比べて水道水が美味しくないと感じることがあります。飲む分には問題ないし気にならないのですが、先日オーランドに旅行に行った際は空港からホテルまで水道水が不味すぎて飲むことができないほどでした。
本記事では、アメリカの水道水が日本に比べて不味いと感じられる理由や、州や地域による水道水の味が違う理由など詳しく解説します。調べてみると水源の違いや水質基準の相違、さらには水処理方法や配管の影響など、さまざまな要因が絡み合って、アメリカの水道水の味に影響を与えていることが明らかになりました。
水源の違い
水源の種類
日本では、水道水の水源として主にダムや湖沼、地下水、そして雪解け水が利用されています。これらの水源は自然環境からの影響を受けにくく、水質が高いことが特徴です。また、日本の水源は地域ごとに点在しており、それぞれの地域が自らの水源から水を供給しています。
アメリカでは、水道水の水源として河川、湖、貯水池、地下水が主に利用されています。アメリカは国土が広大であり、地域や気候によって水質や水源の状況が大きく異なります。そのため、地域によっては水質が劣化したり、水道水の味に差が出ることがあります。
地形や気候の違い
日本は山がちな国であり、多くの河川やダムが山間部に位置しています。また、日本の気候は湿潤で降水量が多く、豊富な水資源が得られることが一般的です。これらの要素が、日本の水道水の水源の水質を高める要因となっています。
アメリカは広大な国土を持ち、地形や気候が多様です。そのため、一部の地域では水源が乾燥地帯や都市部にあることがあります。これらの地域では、水質が劣化しやすく、また水不足の問題が発生することがあります。これが、アメリカの水道水の水源における水質のばらつきに影響しています。
これらの違いにより、日本とアメリカの水道水の水源の水質や味が異なることがあります。ただし、アメリカでも水道水の品質基準が設けられており、水道水は安全に飲むことがで安心してください。
水質基準
基準の策定機関
日本では、厚生労働省が水道水の水質基準を策定しています。これらの基準は「水道法」に基づいて定められており、全国の水道事業者が遵守する必要があります。
アメリカでは、環境保護庁(EPA: Environmental Protection Agency)が水道水の水質基準を策定しています。EPAは、「安全飲料水法」(Safe Drinking Water Act, SDWA)に基づいて基準を定め、水道事業者に遵守を求めています。
水質検査項目
日本の水道水の水質基準では、50項目の物質について規制が設けられています。これらの項目には、微生物、有害物質、放射性物質などが含まれており、水道水がこれらの基準を満たしていることが求められます。
アメリカの水道水の水質基準では、約90項目の物質について規制が設けられています。これらの項目には、微生物、鉛、銅、窒素化合物、残留塩素、放射性物質などが含まれています。基準はさらに「一次基準」と「二次基準」に分けられ、「一次基準」は健康に関する規制であり、「二次基準」は水道水の味、臭い、色などを規制しています。
こう見るとアメリカの方が検査項目が多く、水質が高いように思われますが日本とアメリカの水質基準では、物質ごとに許容される基準値が異なることがあります。例えば、残留塩素の基準値は、日本では0.1mg/L以下、アメリカでは4mg/L以下となっています。このような違いが、水道水の味や品質に影響を与えることがあります。一般的には水質検査は日本の方が厳格に行われており水質が高いと言えます。
水道水の処理方法
アメリカでは、水道水に塩素が添加されることが一般的です。これは、細菌やウイルスを除去し、水道水の安全性を確保するためです。しかし、塩素の添加によって、水道水に特有の味や臭いが発生することがあります。一方、日本では、塩素の使用量が比較的少なく、また別の方法(例:オゾン消毒)で水道水を処理することがあります。
日本もかつて「水道水がまずい」と騒がれていた時代がありました。かつては急速濾過方式という塩素を使用する方法で処理されていたものが高度浄水処理方式というオゾンを使用して処理する方法に変更されたおかげで水道水が美味しくなった背景があります。
急速濾過方式は短時間で大量の水を処理が可能で、設置スペースが高度浄水処理方式に比べて狭いです。さらに単一の濾過工程により、設備や運用コストなので費用が安く済みます。ですが濾過能力が他の方式に比べて低いです。
配管の違い
配管材料の違い
日本では、ポリ塩化ビニール(PVC)やポリエチレン(PE)といったプラスチック配管が一般的に使用されています。これらのプラスチック配管は、味や匂いに影響を与えにくく、また腐食にも強いです。
アメリカでは、地域によっては鉄、銅、鉛などの金属配管が使用されていることがあります。金属配管は、水道水に金属イオンが溶出することで、水の味や品質に影響を与えることがあります。特に鉛配管の場合、鉛が水に溶け出し、健康上の問題を引き起こすことがあります。
配管の劣化とメンテナンスの違い
日本の配水システムは比較的新しく、劣化が進んでいないことが多いです。また、日本では、水道管の漏水率が低く、配水システムの維持管理が適切に行われていることが一般的です。
アメリカでは、都市や地域によっては配水システムが古く、劣化が進んでいることがあります。劣化した配管は、水漏れや汚染物質の侵入を引き起こすことがあり、水道水の味や品質に影響を与えます。また、広大な国土を持つアメリカでは、長距離の配水が必要な場合が多く、これにより水質が変化することがあります。
これらの違いから、アメリカと日本の水道水の配管の違いも水道水の味や品質に影響を与える要因となり得ます。
最後に
旅行者などでアメリカの水道水が合わないと感じた方は大人しくスーパーやコンビニで水を買うことをおすすめします。日本に比べるとかなり割高ですが旅行中はケチらず健康第一ですね。