【衝撃】アメリカ人は貯金が$400以下しかない? アメリカの経済事情
40%近くのアメリカ人の貯蓄が400ドル(約60,000円)以下であるという事実を聞くと、多くの人は驚くかもしれません。
なぜこのような状況になっているのでしょうか?
本記事では、アメリカの経済事情を詳しく掘り下げ、この驚くべき事実の背景を探ります。
アメリカの経済の現状
まずはCPIを元にアメリカの経済状況を解説します。
CPIとは?
消費者物価指数(CPI)
CPIは、アメリカの都市部の消費者が購入する代表的な商品とサービスの価格変動を測定する指標です
これには、食品、エネルギー、衣料品、住居費、医療費、交通費など、幅広い消費財とサービスが含まれます。
CPIはインフレーションの主要な指標であり、政府、企業、労働組合などが経済政策の判断や給与の調整に利用します。
コア消費者物価指数(コアCPI)
コアCPIは、CPIから食品とエネルギーの価格を除いたものです。
食品とエネルギーの価格は変動が激しく、短期間で大きく上下することが多いため、これらを除外することで基調的なインフレーションの動向をより安定的に捉えることができます。
コアCPIは、中央銀行が金融政策を決定する際に重視する指標の一つです。
ロシアのウクライナ侵攻はエネルギー価格の上昇に大きな影響を与えましたが、だからと言ってインフレが到来しているとは限りません。
CPIよりもコアCPIの方がインフレ率を正確に把握できるよ
青い線:全品目のインフレーション率(年率 %)
赤い線:食品とエネルギーを除くコアインフレーション率(年率 %)
FRB(Federal Reserve Board)は、日本の日本銀行に相当する中央銀行で、物価の安定と経済成長を目指して政策を運営しています。
そのFRBは2%を少し上回るインフレ率を目標としているので大幅な物価上昇が続いている事が図から読み取れます。
2021年2月にはコアCPIは1.3%まで落ち込みましたが、American Rescue Plan(給付金の配布)の影響もあり凄まじいインフレが到来しました。(ARPの経済への影響)
2022年9月には最高値の6.6%を付け、記事執筆時の2024年も継続的に3%を超えており依然として物価高は続いています。
インフレが起これば経済成長をが見込めますが、過度なインフレは国民の生活を苦しめる事もあります。
物価が高くなると企業の売り上げが上がり、社員の給与も上がりますが、すぐに給与が上昇するわけではないので一定期間は生活にマイナスの影響を与えることになります。
アメリカの失業率
次にアメリカの失業率を見てみましょう。
コアCPIのデータによるとコロナが本格的にスタートした2020年3月に直近10年間で最低の1.2%を記録しています。
デフレにより消費者意欲が落ち、失業率は2020年の4月に過去最高の14.8%を記録しました。
2022年1月からは4%を超えていません。
月別でアメリカのコアCPIと失業率の推移を比較したデータを見てみるとデフレで失業率が上がり、インフレにより失業率が下がっているのがわかります。
「インフレは悪だ」と主張する方も居ますが、インフレにもデフレにもデメリットは存在します。
インフレの大きなメリットの一つに失業率の低下があります。
オークンの法則にもあるように、経済成長によって失業率が下がっていますね
アメリカの真の失業率(True Rate of Unemployment)を見てみましょう。
真の失業率とは、週35時間以上のフルタイムの仕事を持ちたいと希望しているが持てない人、仕事がない人、または年収25,000ドル未満の生活賃金を稼いでいない労働力人口の割合を示しています。
政府が発表しているデータ推移はほぼ同じですが、真の失業率の数値は+20%ほどになっており、アメリカの苦しい現状が見てとれます。
真の失業率で見ると、インフレで失業率が改善した後の2024年も約4人に1人が問題を抱えている計算になります。
さらに学歴別に見ると失業率の差は顕著になっており、高校未卒業と学士以上では30%以上の失業率の差があります。
・高校未卒業: 48.3%
・高校卒業: 28.3%
・大学一部履修: 26.7%
・学士号: 15.7%
・修士号以上: 13.6%
日本の学歴別の完全失業率と比較するといかに日本が労働者にとってありがたい国かわかります。
完全失業率(学歴別・年齢階層別)(2022年)
このデータの驚くべき点は日本だと高学歴者の方が失業率が高い場合があるという事です。
仮説ですが日本では未経験でも出来る仕事が多いのが理由の1つに挙げられると思います。
アメリカではレストランのウエイトレスやスーパーのレジの仕事なども経験を求められることが多く、日本のように完全未経験から人材を育成するというシステムはありません。
日本は労働者天国?
アメリカの貧富の差
ここまでアメリカの経済状況を見てきましたが、次にタイトルの「40%近くのアメリカ人の貯蓄が400ドル以下」という問題について詳しく見ていきましょう。
この40%は主に低所得者であり、高所得者が不動産屋や株に資金を充てており、口座に現金がないという話ではありません。
JPMorgan ChaseのCEOのジェイミー・ダイモン氏は株主に対して同社の業績、経済の現状、および将来の展望について説明するために発行した記事で以下のように言及しています。(JPMorgan Chase & Co.)
“アメリカの労働者のうち約40%が400ドル未満の貯蓄しか持っておらず、突発的な支出に対処することが困難です。
このような状況は、経済的不安定、健康問題、犯罪率の高さなど、多くの社会問題を引き起こしています。
教育システムにおいても、低所得層の学生は大学に進学する確率が高所得層の学生の半分以下であり、多くの都市部の学校では卒業率が50%を下回っています。
この40%のうちの5人に1人は連邦貧困水準以下の収入しかない家庭に属しています。
低所得地域に住んでいる人々は、精神的健康問題、うつ病、自殺率が高く、平均余命が20年も短くなるなど、健康状態が悪化する傾向があります。
さらに、低所得のアメリカ人は一般的に失業率が高く、犯罪も多くなります。”(JPMorgan Chase & Co.)
連邦貧困水準(Federal Poverty Level, FPL)は以下の通りです。(ASPE Poverty Guidelines)
家族の人数 | 年収(ドル) |
---|---|
個人 | 15,060 |
2人家族 | 20,440 |
3人家族 | 25,820 |
4人家族 | 31,200 |
この収入だと日本でも暮らすのは厳しいかもしれないですね
アメリカの所得の二極化
Pew Research Centerによると、1971年から2019年の間でも、中間所得層の割合は61%から51%に減少しました。
この期間中、上位所得層の割合は14%から20%に増加し、下位所得層の割合は25%から29%に増加しており、現在もこの現象は続いています。(Pew Research Center)
米国国勢調査局によると、COVID-19、パンデミック対応するためのEconomic Impact PaymentsやChild Tax Creditなどの政策が終了すると、低所得層の格差が広がりました。(Census)
COVID-19 パンデミック対応政策
Economic Impact Payments (EIP)
Economic Impact Payments(経済的影響支援金)は、COVID-19パンデミックの影響を軽減するためにアメリカ政府が実施した政策です。この政策では、所得制限を満たす個人や家庭に対して直接現金支援が行われました。これにより、消費支出を促進し、経済活動を維持することを目的としています。
Child Tax Credit (CTC)
Child Tax Credit(子供税額控除)は、家族の負担を軽減し、子育て世帯の支援を目的とした政策です。パンデミックの影響を受けて、この制度は一時的に拡充され、所得に応じた月額支給が導入されました。これは、家計の安定と子供の福祉を向上させることを目的としています。
下記の図は2021年から2022年の年収格差を表した図になります。
上記の図の解説をしますが、少し難しいので気になる方だけ読んでみて下さい。
ジニ指数の解釈
低いジニ指数(0に近い)
所得分配が比較的平等であることを示します。例:ジニ指数が0.2の場合、所得分配はかなり平等です。
高いジニ指数(1に近い)
所得分配が非常に不平等であることを示します。例:ジニ指数が0.8の場合、所得分配は非常に不平等です。
図に示されている数値は、ジニ指数そのものではなく、前年からのジニ指数の変化率を示しています。
図のジニ指数の意味
-1.2%
ジニ指数が前年から1.2%減少したことを示しています。つまり、所得の不平等がわずかに改善したことを示します。
3.2%
ジニ指数が前年から3.2%増加したことを示しています。つまり、所得の不平等が悪化したことを示します。
所得格差の変化
90th-to-10th
税引前所得では6.7%減少しているのに対し、税引後所得では8.2%増加しています。これは、税引後に高所得者と低所得者の格差が拡大していることを示します。
所得分布の上位10%(90th percentile)と下位10%(10th percentile)の所得比率を示します。
90th-to-50th
税引前所得では3.3%減少しているのに対し、税引後所得では2.0%増加しています。これは、税引後に高所得層と中間所得層の格差が拡大していることを示します。
所得分布の上位10%(90th percentile)と中位50%(50th percentile)の所得比率を示します。
50th-to-10th
税引前所得では3.5%減少しているのに対し、税引後所得では6.0%増加しています。これは、税引後に中間所得層と低所得層の格差が拡大していることを示します。
所得分布の中位50%(50th percentile)と下位10%(10th percentile)の所得比率を示します。
税引き前の収入では低所得者層の所得格差が一部改善されたように見えますが、手取り年収で見たときの格差はむしろ広がっているという結果になりました。
ジニ指数とか難しいけど、要はコロナ後にさらに所得格差が広がっているというデータです
さらにFederal Reserve Bank of St. Louis(アメリカの連邦準備制度(FRS)の一部であり、8つの地域連邦準備銀行の一つ)によると、2023年第4四半期のデータでは、上位10%の世帯は総家庭財産の66.9%を保有していいます。
一方で、下位50%の世帯はわずか2.5%の財産しか保有していませんでした。(St. Louis Fed)
このように、富の集中は依然として非常に高い状態にあります。
お金持ちと貧乏人の格差は広がる一方…
まとめ
物価高、高い失業率、学歴社会、所得の二極化など、さまざまな要因が絡み合って、多くのアメリカ人が貯金をする余裕すらない状況に追い込まれていることがお分かりいただけたと思います。
さらにアメリカの医療費は高額で、2500万人以上が健康保険に加入していないという現実もあります。
有事の際には医療費を払えずに借金を余儀なくされる人々も少なくありません。
医療費の問題は、家計に大きな負担をかけ、経済的な不安を一層深刻化させます。
また、逼迫した生活の中で窃盗や万引きなどの犯罪に手を染める人々も増えています。
貧困層の増加は、アメリカの犯罪率の増加にも直結しており、社会全体に深刻な影響を与えています。
これらの問題を解決するためには、経済政策の見直しや社会保障制度の強化が不可欠です。
アメリカが真の意味で経済的に豊かになるためには、すべての市民が安心して生活できる環境を整えることが重要です。
このように、多くのアメリカ人が直面している経済的困難は、個人の問題にとどまらず、社会全体の課題として捉える必要があります。
今後、どのような対策が講じられるかが注目されるところです。