人それぞれに体型や体質の違いはあります。
一部の人々は少し食べただけで体重が増えやすく、一方で他の人々はどれだけ食べても太りにくいと感じることがあります。
しかし、これらの違いは何によるものなのでしょうか?
遺伝と体質(Genetics and Physical Constitution)
遺伝は、私たちがどれだけ太りやすいか、または太りにくいかに大きな影響を与えます。
一部の遺伝子は食事からのエネルギーの吸収やエネルギー消費の速度、脂肪の蓄積方法に影響を与えます。
遺伝子が私たちの体重に及ぼす影響の範囲は研究によりますが、体重の40-70%が遺伝的要素によって決定されると報告されています。
また、体質も考慮に入れるべき要素です。
いわゆる「エクトモーフ」(細身で筋肉質が少ない体型)の人は、体重が増えにくい傾向があります。
一方、「エンドモーフ」(肥満体質の人)は、体重が増えやすく、また減りにくい傾向があります。
基礎代謝率(Basal Metabolic Rate)
基礎代謝(BMR)とは、人間が安静時に生命維持活動に必要な最小限のエネルギー消費量のことを指します。
つまり、一日中ベッドに横たわって何もしなかったとしても、私たちの体は呼吸をしたり、心臓を動かしたり、体温を維持したり、細胞を修復したりするためにエネルギーを消費します。
これらの活動に必要なエネルギーの消費量が基礎代謝です。
筋肉量(Muscle Mass)が多ければ基礎代謝は高く、少なければ低くなります。
基礎代謝は個々の身体のサイズ、性別、年齢、そして遺伝的要素などによって影響を受けます。
一般的には、男性の方が女性よりも基礎代謝率が高く、若い人の方が高齢者よりも基礎代謝率が高いとされています。
また、筋肉量が多いほど基礎代謝は高くなります。
これは筋肉が脂肪よりも多くのエネルギーを消費するためで、このことが筋トレがダイエットに効果的な理由の一つとなっています。
食事と生活習慣(Diet and Lifestyle)
食事の質と量、運動量、ストレスレベル、睡眠量と質などの生活習慣も、私たちが太りやすいか太りにくいかを決定します。
高カロリーで栄養素が少ない食事を頻繁に摂取し、運動量が少ない人は太りやすくなります。
一方、バランスの取れた食事を摂取し、定期的に運動をしている人は太りにくくなります。
ストレスも体重に影響を与えます。
ストレスがかかると、体は「Fight or Flight」反応を引き起こし、ストレスホルモンであるコルチゾールを放出します。これは食欲を刺激し、特に高脂肪・高糖質の食物を求めるようになります。
*「Fight or Flight」とは人間や他の動物が危険な状況に直面したときに自律神経系が引き起こす生理的な反応のこと。
最後に、睡眠も重要な要素です。
研究によれば、短時間の睡眠は肥満と関連があり、睡眠不足は食欲を刺激し、特にカロリーの高い食べ物を求める可能性があると報告されています。
筋トレで痩せやすい身体を作る
前述したように筋トレはダイエットには非常に効果的です。
なぜ筋トレがダイエットに効果的なのか科学的根拠を交えて深掘りしていきます。
基礎代謝の向上(Improving Basal Metabolism)
筋肉は脂肪よりも多くのエネルギーを必要とします。
つまり、筋肉量が増えると、体はより多くのカロリーを消費するようになります。
これは、安静時(つまり運動していない時)でも同様です。
そのため、筋トレを通じて筋肉量を増やすことは、基礎代謝率を高め、結果的により多くのカロリーを燃焼させることにつながります。
脂肪の燃焼(Burning Fat)
言わずもがなかもしれませんが、筋トレは高強度のエクササイズであり、それにより脂肪させることができます。
特に、高強度の筋トレは「エクササイズ後の酸素消費増加」(EPOC)という現象を引き起こします。
これは、運動後も体が高いエネルギー状態を維持し、結果的により多くのカロリーを燃焼するという現象です。
インスリン感受性の向上(Improving Insulin Sensitivity)
筋トレは、体のインスリン感受性を向上させる効果があります。
インスリンは血糖値(Blood Sugar Level)を管理するホルモンで、筋肉はインスリンの主要な作用先です。
筋トレにより筋肉が増え、インスリン感受性が向上すると、血糖値が効率的に管理され、体内でのエネルギー利用が改善します。
心臓病リスクの低減(Reducing Heart Disease Risk)
ダイエットには関係ないですが、定期的な筋トレは心臓病のリスクを低減する可能性があります。
筋トレは血圧を下げ、コレステロール値を改善し、体重を管理します。
食欲管理(Appetite Control)
筋トレをすると交感神経(Sympathetic Nervous System)を刺激されます。
交感神経が活性化されると、体はエネルギーを運動に向けてリダイレクトし、それにより食欲が一時的に抑制されます。
*ただし、エクササイズ後には体が消費したエネルギーを補充しようとする自然な反応として、食欲が増すことが一般的です。
また、交感神経系は満腹中枢(Satiety Center)に一部影響を与えるため、交感神経系が活発な人は食欲をより効果的に管理できる可能性があります。
したがって、適切な食欲管理が難しく、さらに運動不足の人は体重が増加しやすい傾向があります。
この観点から、交感神経系を刺激する筋トレは体重管理やダイエットに非常に効果的であると言えます。
つまり、筋トレと適切な食事、十分な休息を組み合わせることで、私たちは健康的で太りにくい体質を手に入れることができるのです。
筋トレを生活の一部に取り入れ、交感神経がもたらす恩恵を最大限に活用しましょう!
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