Suitsで英語を学ぼう ドラマの用語や背景を詳しく解説 ドラマで英語学習
はじめに
「Suits」は、才能にあふれるが法律学校の学位を持たない天才マイク・ロスと、ニューヨークのトップ法律事務所で働くハーヴィー・スペクターという二人のカリスマ的な弁護士を描いた人気のアメリカの法廷ドラマシリーズです。
日本でも大人気の米ドラマ「Suits」ですが、専門用語も多いので英語の勉強がてら見るにしてもアメリカの法律の背景などを知っていないと中々、理解するのは難しいのではないかと思います。
ですので、この記事では「Suits」を基準にアメリカの法律システムや用語などを簡単に解説していきたいと思います。
法律システム、法律事務所
アメリカの法律システムや法律事務所について説明します。
Federal vs. State Law 連邦法と州法
アメリカでは連邦法と州法の2つが存在します。
連邦法は全米のすべての人々に適用され、一方、州法は各州の境界内に適用されます。
アメリカ合衆国憲法は、特定の権限を連邦政府に付与し、残りの権限を各州に与えています。
連邦法が州法に矛盾が生じた場合は、基本的に連邦法が優先されます。
ただし、連邦刑法が存在する一方で、ほとんどの刑法は州法です。
犯罪が連邦の事項(州間を越えたものや、連邦税に関連するものなど)を含まない限り、ほとんどの場合は州法によって起訴されます。
Civil vs. Criminal Law 民事法と刑事法
法律には大きく分けて二つのカテゴリーがあります。それは民事法と刑事法です。
刑事法は、国家に対する犯罪(例えば、殺人、強盗、詐欺など)を扱い、罰として懲役が科されることがあります。
民事法は個人や組織間の紛争を扱い、通常は金銭的な賠償や何かをするまたはしないよう命じることが結果として生じます。
「Suits」は主に民事事件、例えば企業法や訴訟を扱っていますが、時折刑事法にも触れています。
Bar Exam 司法試験
アメリカでも日本同様、司法試験(通称:Bar)に合格しなければ弁護士の資格は与えられません。
作中ではマイクがBarの試験の替え玉のバイトをしている描写が何度か描かれていますね。
アメリカで司法試験を受けるためには、アメリカ弁護士協会(ABA)に認定された法科大学院から法務博士(JD)の学位を取得していることが求められます。
法科大学院に入るのにもLSAT(the Law School Admission Test)という難関テストに合格しなければなりません。
作中でパラリーガルのレイチェルはLSATに無事に受かり、法科大学院に合格しています。
またアメリカは州法があるので、一つの州で弁護士資格試験に合格すると、その州でしか法律の実務が行えません。
法律事務所の階層構造
法律事務所には通常、階層的な構造があります。
最下層には、法律事務所に雇用されているが事務所の所有権を持たないアソシエイトがいます。
作中ではマイクはハーヴィーの専属のアソシエイトとして雇用されています。
中間レベルにはパートナーがいて、彼らは事務所の所有者であり、その利益を共有します。
シーズン1の序盤でハーヴィーは「ジュニアパートナー」から「シニアパートナー」に昇進しています。
事務所によって構造は異なりますが、一般的に「シニアパートナー」は「株主パートナー(equity partner)」を指し、事務所の所有権を持ち、その利益(および可能性としては損失)を共有することを意味します。
逆に「ジュニアパートナー」は「非株主パートナー(non-equity partner)」とも呼ばれ、パートナーシップレベルに昇進したが、事務所の所有権を持っていない弁護士を指します。
最上位には、事務所の運営を監督するマネージングパートナーがいます。
作中ではジェシカがマネージングパートナーに該当します。
弁護士と依頼人間の秘密保持(Attorney-client privilege)
弁護士と依頼人間のコミュニケーションを秘密に保つ法的原則です。
これは依頼人が弁護士に対して正直であることを奨励し、弁護士が依頼人を効果的に代表するのに役立ちます。
シーズン5でもこのAttorney-client privilegeを使用してマイクを守るために使用しています。
証拠開示(Legal Discovery)
証拠開示とは、実際の裁判が始まる前に各当事者が他方の当事者から証拠を得ることができる予審(pre-trial)手続きです。
これには、宣誓した上で回答しなければならない尋問(interrogatories)、宣誓した上でのインタビュー(depositions)、および文書の要求が含まれることがあります。
証拠開示により証拠が一方の当事者に圧倒的に有利である場合は弁護士は裁判を行わずにクライアントに和解(Settlements)を勧める事もあります。
また証拠開示は裁判中に「驚き」の証拠や証人を防ぐことで裁判をより公平にする目的があります。
裁判中に証拠開示で提示されなかった新たな証拠を提示すると、相手方が異議を唱え、裁判所はそれを認めない事があります。
リーガルドラマでは定番の裁判中に「異議あり!(Objection)」と言うシーンがありますが、相手方が裁判を有利に進めようとして新たな証拠を提出しようとした時などに異議を申し立てたりします。
プロボノ活動(Pro Bono)
多くの弁護士や法律事務所は、「プロ・ボノ・プブリコ」または「プロ・ボノ」 — 公共の利益のために — として特定のケースを引き受け、そのサービスに対して料金を請求しないことがあります。
これらのケースは、弁護士を雇うことができない依頼人や、弁護士や事務所が支援したいと考える原因をしばしば含んでいます。
宣伝活動の一環として大きな法律事務所でも一定のプロボノ案件を引き受けています。
作中ではハーヴィーがプロボノ案件を特に毛嫌いしており、マイクに押し付けている描写が見られます。
法律用語
ドラマを見る上では欠かせない法律用語などを紹介します。
原告(Plaintiff)
これは訴訟を起こす人または当事者です。
例えば、ある人が彼の仕事での解雇が不当だと考えて訴える場合、その人は原告となります。
民事訴訟では、原告は不正や被害を受けたと感じ、被告に対して損害賠償や特定の行動を求める人です。
刑事訴訟では、検察官(prosecutor)が政府を代表して原告として行動します。
被告(Defendant)
被告は訴えられた当事者または犯罪で告訴されている当事者です。
彼らは原告の請求に対して応答することが求められます。
「Suits」では、主要キャラクターがしばしば被告の弁護士として行動する事もあります。
「訴えられたけど実は無罪だった」という逆転劇のエピソードも幾つかありますね。
裁判官(Judge)
裁判官は中立的な立場の人物で、訴訟を監督します。
彼らは証拠の許容性などの法的な問題に決定を下し、審理が手続きのルールに従って行われることを確認します。
陪審員がいない裁判(bench trial)では、裁判官が証拠を評価し、事実を決定し、最終的な判決を下します。
しかし陪審裁判(jury trial)では、裁判官は法的な問題について判断し、陪審員が事実を評価し判決を下します。
裁判官は陪審員に対して法律の解釈と適用についての指示を提供し、陪審員はその指示に基づいて証拠を評価し、有罪または無罪の判決を下します。
陪審員(Jury)
多くの事件、特に刑事裁判(criminal trials)では、一般市民からなる陪審員が事件の事実を決定し、被告の有罪(guilt)または無罪(innocence)を決定する責任があります。
民事訴訟(civil cases)では、陪審員も損害賠償額(amount of damages)を決定することがあります。
弁護士は法律の知識だけではなく、陪審員の心を動かすようなアピールをして事件を有利に進める必要があります。
マイクの学歴詐称の裁判(シーズン5)ではハーヴィーが集まった陪審員に語りかけているのが確認できると思います。
検察官(Prosecutor)検察当局(Prosecution)
強盗や殺人などの国家に対する刑事訴訟(criminal cases)では、検察官が政府を代表し、原告として行動します。
彼らは被告に対して告訴を起こし、被告の有罪を合理的な疑いを超えて証明しなければなりません。
ハーヴィーは弁護士になる前は検察官として地区検事(District Attorney’s Offices通称:the DA’s office)で働いていました。
証人(Witnesses)
これらは事件に関連する情報を持つ人々です。
彼らは何かを見た、何かを知っている、または事件に関連する分野の専門家である可能性があります。
どちらの当事者も証人を呼んで証言させることができます。
法務アシスタント/パラリーガル(Legal Assistant/Paralegal)
これらは弁護士の仕事をサポートする人々です。
これには、文書の作成、法律研究、ファイルの整理など、さまざまなタスクが含まれます。
「Suits」ではレイチェルがパラリーガルとして働いていますね。
法科大学院に進もうと考えている人や法科大学院は卒業したけど司法試験に合格が出来ていない人などがパラリーガルとして働く場合があります。
日本でも話題になった小室圭氏も司法試験に合格するまでは法律事務所でパラリーガルとして働いていたようです。
起訴(Indictment)
これは、特に重罪の犯罪を犯したとされる人々に対する正式な告発(Charge)です。
たとえば、強盗や殺人などの犯罪が犯されたとき、検察官は大陪審に起訴状を提出します。
大陪審は証拠を検討し、それが十分であれば、被告人を法廷に立たせるための起訴状を発行します。
マイクの学歴詐称の事件も刑事訴訟として起訴されています。これは、マイクが重罪を犯したという正式な告発です。
*Indictmentの”c”は発音せずにインダイトメントと発音されるので注意してください。
訴訟(Litigation)
訴訟は、2つ以上の個人や組織間の法的な争いを解決するためのプロセスです。
たとえば、ある企業が別の企業を商標侵害で訴える場合、これは訴訟の一部となります。
訴状(Complaint)
訴状は、訴訟の始まりを宣言する法律文書です。
例えば、ある人が彼の隣人に対して騒音による損害を求めて訴える場合、訴状では、どのような損害を被ったか、その原因は何であるかを明記します。
和解(Settlements)
現実世界ではほとんどのケースは裁判にまで至りません。
代わりに、当事者が解決に合意することで解決されます。
これは通常、被告が原告の要求(損害賠償の支払いなど)の一部または全部に同意することを含みます。
「Suits」でも「この条件でSettleしろ」などとやりとりがありますね。
上訴(Appeals)
裁判の結果に満足していない当事者は、通常、判決を上級裁判所に上訴することができます。
上級裁判所(控訴裁判所)は、法律が正しく適用されたかを確認するためにケースを見直します。
宣誓供述書(Affidavit)
これは一人の人物が法的に拘束力のある形で事実を述べた文書で、通常は公証人などの第三者が立ち会う中で署名されます。
これは、裁判などの法的手続きにおいて重要な証拠となることがあります。
供述録取(Deposition)
証人が法廷外で行う口頭による証言で、裁判の一部として後に使われることがあります。
通常は弁護士が出席し、質疑応答形式で行われ、全てが録音またはビデオで記録されます。
採録は、事前に証人の証言を得ることでその後の裁判を円滑に進めるために用いられます。
「Suits」でも会議室でビデオを録音しながら弁護士が原告や被告に質問をするシーンが何度も見られると思います。
召喚状(Subpoena)
裁判所から発行され、特定の人物に法廷に出頭するよう命じるものです。
証人として出頭するよう要求する「subpoena ad testificandum」や、特定の文書や証拠を法廷に提出するよう要求する「subpoena duces tecum」などがあります。
これに従わない場合、侮辱罪(contempt of court)となることがあります。
*Subpoenaの”b”は発音せずにサピーナと発音されるので注意してください。
ドラマを見る前に覚えておいた方が良い語彙
前項の法律用語と重複する単語もありますが、ドラマを見る前に知っておくと便利な単語をいくつか紹介します。
Indictment | 起訴 |
Litigation | 訴訟 |
Charge | 告発 |
Complaint | 訴状、クレーム |
Plaintiff | 原告 |
Defendant | 被告 |
Attorney/Lawyer | 弁護士 |
Affidavit | 宣誓証言、宣誓供述書 |
Deposition | 証言の記録 |
Subpoena | 召喚状 |
Alumnus | 卒業生 |
Misconduct | 不正行為 |
Convicted | 有罪と宣告された |
Felony | 重罪 |
Sentence | 判決 |
Testify | 証言する |
Allegation | 主張、申し立て |
Severance | 解雇、解任 |
Extortion | 恐喝 |
Duress | 強制、脅迫 |
Perjury | 偽証 |
Collateral | 担保 |
Warrant | 令状 |
Perpetrator | 加害者、犯人 |
Capital offense | 死刑のような重い罪 |
Embezzle | 横領する |
Reconcile | 和解する |
Jurisdiction | 司法権、 裁判権、 管轄 |
Disbar | 弁護士資格を剥奪する |
Testimony | 証言 |
Sue | 訴える、告訴する |
Bail | 保釈 |
Probation | 保護観察、試用期間 |
さいごに
Suitsは登場人物の会話のスピードも速い上に法律用語も多いので、シットコムなどに比べるとレベルは非常に高いです。
英語がネイティブでも完璧には理解できない人も多いかと思います。
法律用語以外にも日常使われているイディオムなんかもかなり使用されているので英語学習にはとてもオススメです。
こんな記事を書いておきながら、実は私は最後まで見ていないのですが最近、久しぶりにアマプラでシーズン1から視聴して面白かったので勢いでこの記事を書いてみました。
時間がある時にこれから少しずつ見ていきたいと思います。