The Emperor of All Maladies: A Biography of Cancer 洋書レビュー ガンの歴史を学べる本
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2011年に発売されたガンの歴史を綴った本のレビュー記事です。
医学知識がない方でもガンの歴史を学ぶ事が出来るように書かれています。
著者のSiddhartha Mukherjee博士はこの本で一般ノンフィクション部門でピューリッツァー賞を受賞しており、とても人気のある本ですが残念ながら日本語訳は発売されていないようです。
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2010年だけで、アメリカで60万人、世界全体で700万人の命を奪ったガン。
これは人類にとっていまだに大きな脅威であり続けています。しかし、ガンの歴史をたどると、私たちの戦いは今に始まったことではありません。
この本では、1900年代初頭から現代に至るまでのガンと人類の関わりを描いていますが、驚くべきことに、ガンは遥か昔から存在していました。
例えば、紀元前の記録やミイラの遺体からガン細胞が発見されているのです。ガンはまさに「古代からの病」とも言えます。
現在でもガンは多くの人々の命を奪い続けていますが、医学の進歩により、その数は過去に比べて年々減少しています。
実際、1990年から2005年にかけて、肺がん、乳がん、大腸がん、前立腺がんの死亡率は毎年約1%減少しました。それでも、2005年には50万人のアメリカ人がガンで亡くなっています。
本書を通じて、過去に多くの人々が犠牲となり、その犠牲が医学の進歩を支えてきたことを知り、感謝の気持ちが生まれました。
さらに39歳女性の400人に1人、70歳の女性の9人に1人は乳がんを発症すると本書に書かれており、他人事ではないように感じました。
「Cancer is and may always be part of the burden we carry with us(がんは私たちが背負っている負担の一部であり続けるかもしれません)」と著者が言っているように、人間とガンは切り離せない存在でおり続けるかもしれません。
ですがその戦いの中でこれからも私たちは少しずつ前進していくでしょう。
本書で使用される英単語
本書は、医学的な知識がない方でも読めるように書かれていますが、同時に多くの医学用語が使用されているため、ある程度の上級者向けとも言えます。
以下に、本書で使用されている上級英単語の一部を紹介します。
単語の説明が本文中に併記されていることも多く、これらの単語を全く知らなくても読み進めることは十分可能です。しかし、英語のレベルとしては英検1級をはるかに超える内容になっています。
本書を辞書無しでスラスラ読めるようであれば読解力は確実にネイティブの知識人レベルと言えるでしょう。
- granulation – 肉芽形成: 傷や潰瘍の治癒過程で、創傷の底部に形成される新しい結合組織の生成を指します。
- palliative – 緩和的な: 症状の緩和を目的とした治療またはケアで、病気自体の治癒を目指さないもの。
- poultice – 湿布: 炎症や痛みを和らげるために皮膚の上に置く、温かい湿布やペースト。
- typhus – 発疹チフス: リケッチアという細菌によって引き起こされる感染症で、発熱や発疹を特徴とします。
- osteosarcoma – 骨肉腫: 骨に発生する悪性腫瘍(がん)で、特に若年層に多く見られます。
- abscess – 膿瘍: 細菌感染により組織内に形成される膿の溜まり。
- neoplasm – 新生物: 異常増殖する細胞によって形成される組織の塊で、良性または悪性の場合があります。
- calcify – 石灰化する: 組織がカルシウムを沈着させ、硬化する現象。
- paleopathologist – 古病理学者: 古代の骨やミイラの研究を通じて、過去の病気や健康状態を調べる専門家。
- dropsy – 水腫: 体内の異常な液体の蓄積により引き起こされる腫れ。
- cholera – コレラ: ビブリオ菌によって引き起こされる感染症で、重篤な下痢と脱水症状を引き起こします。
- smallpox – 天然痘: バリオラウイルスによって引き起こされる致命的なウイルス感染症。
- leprosy – ハンセン病: ミコバクテリウム・レプラエによって引き起こされる慢性的な感染症で、皮膚や神経に影響を与えます。
- mammography – 乳房撮影: 乳がんの早期発見を目的とした乳房のX線検査法。
- reagent – 試薬: 化学反応を引き起こしたり、物質を分析したりするために使用される物質。
- gastroenteritis – 胃腸炎: 胃と小腸の炎症を伴う感染症または疾患で、嘔吐や下痢が一般的な症状です。
- coagulate – 凝固する: 液体が固体または半固体の状態になる過程。特に血液が固まること。
- sarcoma – 肉腫: 骨、筋肉、脂肪などの結合組織に発生する悪性腫瘍の一種。
- carcinoma – 癌腫: 皮膚や臓器の上皮細胞から発生する悪性腫瘍(がん)。
- resect – 切除する: 手術で病変部や損傷した部分を取り除くこと。
- suture – 縫合: 手術で傷口や切開部を縫い合わせるための医療技術または材料。
- gallbladder – 胆嚢: 胆汁を蓄える器官で、脂肪の消化に役立ちます。
- hemodialysis – 血液透析: 腎不全などの場合に、血液から老廃物を除去するための人工的な浄化法。
- mediastinal – 縦隔の: 胸部中央にある、心臓、気管、食道などを含む部分。
- mastectomy – 乳房切除: 乳がん治療のために乳房を外科的に切除する手術。
- supraclavicular – 鎖骨上の: 鎖骨の上方に位置する領域を指す解剖学的な用語。
- axilla – 腋窩: 腕の付け根、一般的に「腋(わき)」として知られる部分。
- urology – 泌尿器科: 泌尿器系および男性生殖器系に関連する疾患を診断・治療する医学の分野。
- meningioma – 髄膜腫: 脳や脊髄を覆う膜(髄膜)に発生する通常良性の腫瘍。
- trachea – 気管: 喉から肺に空気を運ぶ管。
- fascia – 筋膜: 筋肉や臓器を覆い、支持する結合組織の層。
- necrose – 壊死する: 細胞や組織が死滅する過程。
- bedridden – 寝たきりの: 長期間、または永続的にベッドにいる状態。
- visceral – 内臓の: 体の内部の主要な臓器に関連するもの。
- humoral – 体液の: 体液に関連する免疫反応や体内の調整に関するもの。
- aneurysm – 動脈瘤: 動脈の一部が異常に膨らむこと。
- asymptomatic – 無症候性の: 症状が現れない病気の状態。
- laparoscopic – 腹腔鏡の: 腹腔鏡を使用して行われる最小侵襲手術の手法。
- leeward – 風下: 風向きの下流側。特に医学では感染症の広がりの観点で使われることがあります。
- hazily – ぼんやりと: 明確ではない様子。病状や視力に関する記述で用いられることがあります。
- providentially – 幸運にも: 予期せぬ幸運な出来事。治療や予後に関連して使われることがあります。
- paradigmatic – 典型的な: 病状や症例が「典型的」なものであることを指す際に使われます。
- prophylactically – 予防的に: 病気の発症を防ぐために用いる治療や薬物。
- therapeutic – 治療的な: 病気や症状を改善するために行う治療または療法。
- ether – エーテル: 麻酔薬として使われる物質で、特に歴史的に重要。
- synergize – 協働する: 薬物または治療法が相乗効果を発揮することを指す。
- sanatorium – サナトリウム: 主に長期療養が必要な患者のための療養所。
- longitudinally – 縦方向に: 解剖学的な構造や症例研究の経過観察に関連して使われることがあります。
- amorphous – 無定形の: 病変や腫瘍が形状や構造を持たないことを指す。
- crucible – るつぼ: 苦しい試練や治療過程を象徴的に表現することがあります。
- penumbra – 半影: 医学では、特に脳卒中の病変部の周囲の弱った領域を指す。