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肉のアブラを食べなくなって太ったアメリカ人:肉の脂を食べて健康になろう

Dori

長い間、「肉のアブラは健康に有害である」という説がアメリカで広く信じられ、それに追随する形で日本を含む多くの国々に影響を与えてきました。

日本でも肉のアブラは健康に悪く、避けた方が良いという考えを持っている人も多くいると思います。

この信念は、食事のガイドラインや公衆衛生政策に大きな影響を及ぼし、私たちが日常的に食べる食品にも影響を与えています。

しかし、この考え方の起源を辿ると、科学的な議論や政治的背景が複雑に絡み合い、最終的にはアメリカにおける肥満や糖尿病の急増に繋がる結果となりました。

脂質の基本:飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸

この歴史を理解する前に、脂質の基本について説明します。

脂質は大きく分けて次の2種類に分類されます:

飽和脂肪酸:安定した分子構造を持ち、酸化しにくい特徴があります。このため、熱や光に対して比較的強い性質を持っています。

  • 主な食品例:肉の脂肪(牛、豚、鶏など)、バター、乳製品、ココナッツオイル、パームオイルなど。

不飽和脂肪酸:構造が不安定で、熱や光にさらされるとすぐに酸化してしまいます。この不安定性のため、加工や保存において注意が必要です。

  • 主な食品例:オリーブオイル、ナッツ類、アボカドなど。

長年にわたり、肉の脂肪などに含まれる飽和脂肪酸は動脈硬化を促進し、心臓病のリスクを高めると信じられてきました

しかし、この信念が形成された背景には、意図的なデータの選択や政治的な意図が関与していることが分かっています。

肉のアブラは悪者説の誕生

「飽和脂肪酸(肉のアブラ)は有害」という説は、1958年にミネソタ大学のアンセル・キーズ博士が提唱したもので、飽和脂肪酸が心臓病や動脈硬化のリスクを高めるとする主張に端を発します。

この仮説の根拠となったのが「7か国研究」と呼ばれるものでした。

しかし、この研究は後に批判を受けることになります。

なぜなら、動物性脂肪の摂取が少なく死亡率が低い7つの国(日本も含まれています)だけを意図的に選び、仮説に合致するデータを集めたと指摘されたからです。

*研究費用の打ち切りやこれまでの研究が無駄になることを恐れて研究データなどが改竄されることは科学の世界では珍しくありません。

それでも、この説はアメリカ国内で広く受け入れられ、1977年にはジョージ・マクガヴァンという議員による報告書が発表されました。

この報告書は、脂肪と心臓病の間に相関関係があると主張し、低脂肪食を推奨する方向性を確立し、マクガバンは「肉は身 体に悪い。低脂肪食品を食べよう」という方向に国を誘導していったのです。

しかもそれらの低脂肪食には、味をよくするために果糖ブドウ糖液糖などの糖質が大量に添加されていました

低脂肪運動とその影響

1990年代になると、アメリカの厚生労働省にあたる機関が大規模な低脂肪食キャンペーンを展開し、飽和脂肪酸の摂取を1日の総カロリーの10%以下に抑えることを推奨しました。

このキャンペーンにより、低脂肪製品が市場に溢れましたが、これらの製品には味を補うために大量の糖分が追加されていました。

しかし、飽和脂肪酸をそこまで低く抑えると、その分を何かで穴埋めせざるを得ません。

そこで当時のアメリカは、安全と信じられていた糖質で補完させようと考えたのです。

そして、ただ糖質を摂るのではなく、全粒粉や玄米など外皮のついた穀類は 身体に良いので積極的に摂りましょうというアドバイスも付け加えました。

結果として、低脂肪食の推奨は以下のような影響をもたらしました:

  1. 糖分の過剰摂取:脂肪を控えた食品には、甘味を補うために高果糖コーンシロップなどが使用され、結果的にカロリー摂取量が増加しました。
  2. 炭水化物への依存:全粒粉や未精製穀物の摂取が推奨されましたが、これらも血糖値を急激に上昇させる原因となりました。
    また、全粒粉に含まれるフィチン酸が体内の鉄分や亜鉛を吸着し、ミネラル不足を引き起こすことも分かっています。
    一時流行したマクロビオティックは貧血になることが問題になりましたが、マクロビオティックは全粒粉や玄米を主食にし、肉類・卵・乳製品を一切摂らない食事で、動物性たんぱく質に 含まれているビタミンが不足します。
    B12は赤血球の材料となるので、貧血になるのは当然の結果です。
  3. 動物性食品の軽視:栄養価の高い動物性脂肪やタンパク質が避けられることで、ビタミンやミネラルの不足を招きました。特に鉄欠乏性貧血のリスクが増加しました。

これらの結果から肥満と糖尿病がアメリカ国内で加速していきました。

1980年に15%前後だった成人の肥満率は1990年には23%、2000年に30.5%と上昇と続けており現在は人口の半数近くが肥満となってしまいました。

転機:脂肪に対する見直し

2014年、アメリカでは「TIME」誌の表紙に「Eat Butter(バターを食べよう)」というタイトルの記事が掲載され、飽和脂肪酸悪者説に疑問を投げかけました。

この時点で、多くの研究者が飽和脂肪酸と心臓病の関連性を裏付ける十分な証拠がないことを認め始めました。

これを機に、アメリカの食事ガイドラインは糖質を減らし、糖質を抑える方向に転換する流れになりましたが未だに肥満率は高いままです。

アメリカの食生活

アメリカに住んでいて思うのが、彼らの食生活の偏りはひどいです。

ピザ、バーガー、ポテト、パンケーキなどを日常的に食べていますし、日本のようにバランスの取れたお弁当やお惣菜はほとんどないので冷凍食品を温めるだけという食生活は一般的です。

さらに日本で考えられている”料理”というものは全くしません。

アメリカではレンジで温めるものは立派な”料理”に分類されます。

このような食生活が根底にあるので今更、糖質を抑えるような流れができても肥満と糖尿病を抑えることはできませんでした。

さらにアメリカでは所得の二極化も進んでおり貧困層はファストフードなどの安価で太りやすい食事を摂らざるを得ないのも肥満率の上昇の理由の一つにあると思います。

アブラや揚げ物が苦手な人の危機

アメリカでは飽和脂肪酸が見直されたものの、日本では依然として飽和脂肪酸悪者説が根強く信じられています。

肉の脂肪が血管の中でそのまま固まると誤解している人も多く、動物性脂肪を避ける傾向が続いています。

肉のアブラは冷えると白く固まるため、あれが血管の中で起こってしまうと思っている人が大変多いのも理由アブラを否定する大きな理由の一つです。

食事から摂ったアブラは脂肪酸の分解を受けるので、あのままの状態では身体の中に入るので問題はありません。

さらに年齢を重ねる毎に、胃もたれなどが理由で「脂っぽいものや肉が苦手になった」という方も多いですが、これはタンパク質不足の慢性化が原因であることがほとんどです。

逆に高齢になってもステーキなどの肉をたっぷり食べることが出来る人は消化酵素と胆汁酸が十分あり、タンパク質をしっかり消化吸収できており非常に健康的といえます。

消化酵素や胆汁酸といった消化吸収に関わる器官はタンパク質を原料として作られています。

他にもホルモンや神経伝達物質などタンパク質が原料になっているものはたくさんあるのでタンパク質不足が慢性化すると健康を維持するのは難しくなってきます。

脂質の働き

この記事では「肉のアブラが健康に悪い」という誤解がされた歴史を紹介しましたが、飽和脂肪酸(脂質)はタンパク質の本来の働きを助けるのに必要ということです。

TCA回路(クエン酸回路)を含むエネルギー代謝では、脂質が最も効率の良い燃料となります。

脂質が不足すると、たんぱく質がエネルギー源として使われてしまい、本来の役割である筋肉やホルモンの生成に使える量が減ってしまいます。

また脂質はビタミン吸収の促進にも役立ちます。

  • 脂溶性ビタミン(ビタミンA、D、E、K)は脂質と一緒に摂取することで吸収率が高まります。
  • 例えば、ビタミンDとAは腸粘膜の健康維持に、ビタミンKは骨形成に、ビタミンEは抗酸化作用による動脈硬化予防に欠かせません。
  • これらのビタミンが不足すると、たんぱく質の吸収能力や消化酵素の生成が低下します。

ジムなどでトレーナーが鶏むね肉とブロッコリーだけの食事を推奨している事がありますが、脂質を避けると、摂取したたんぱく質がTCA回路を回すエネルギー源として使われてしまい、筋肉やホルモンの生成に十分な量が確保できないので筋トレで体つくりをするためにも脂質を含むバランスの取れた食事が重要です。

さいごに

肉のアブラを怖がらずにバランスよく食べていこうと思います。

今回の記事で参考にした本はこちらです。

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アメリカ在住。 趣味のNBA観戦、Magic The Gathering、プログラミング、読書、英語学習やアメリカの生活について雑多な記事をブログで綴っています。
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